3分間コーチ〜メンバーの「居場所」をつくるために僕ができること

コーチングの第一人者、伊藤守さんの著作。といってもコーチングの技術が書いてある本ではなく、生産的なチームを作るために、いかに部下のことを考え、部下とコミュニケーションする時間を確保することが重要かについて書かれた本。
当たり前のことのように思えるけれど、いかにそれができていないか、自分の普段の行動をちょっと振り返ってみるだけで分かる。
この本からの学びについて、書いてみる。


◆部下と話す時間を作る
◆部下について考える時間をとる
年に数回の目標面接、評価面接で部下と十分に話ができるわけはないし、リアルタイムで部下が抱えている問題や、課題に対処できるわけがない、というのは当然の話だと思うが、タイミングよくここぞという時に部下と話すためには、普段から部下のことを考えていなければならない、考える時間を意識的に取らなければダメだ、ということだと思う。
自分は多くの部下を抱えているわけではないから、部下のことを考える時間をとる、というのは比較的簡単なはずなのだが、それでも自分の仕事で目一杯になってしまうと周囲のことが見えなくなり、部下がどんな仕事をしているのか、どんなことを抱えているのか、考えることができなくなる。いや、そんな忙しくなくても育成、という観点から部下のことを考えてられているかというと甚だ怪しい。
「知らないことに気づくことが、次の行動へと人を動機付けます」
同じオフィスで働いているから、仕事でやり取りしているから、部下のことを知っている、わかっていると思うのは傲慢だろうな。日頃から面倒がらずに考える時間を持つこと。


◆上司のいう通りに部下が動くなら、上司はいらない
この言葉ってとてもショッキングだ。とかく犯してしまいがちな過ちは、自分が指示すれば、お願いすれば相手は自分の思った通りに動いてくれる、という思い込みだ。そして思った通りにならないと、それを相手のせいにして心の中で責めてしまう。でも、自分だって人から言われたこと、指示されたこと、全部やっているだろうか?やらなければならない、と思っていてできていないことも枚挙にいとまがない。
分かることと、実行に移すことの間に横たわる溝はかなり深い。
この溝に橋を架けることがコミュニケーションだという。
実行を妨げる要素:不安やスキル不足、優柔不断を解決するのがコミュニケーション。それだけの密度と質の高いコミュニケーションが必要ということ。


◆部下の態度は、上司の態度の反映である
これも相当にショッキングな言葉。相手の反応は、自分の鏡であるというが、まさに同じことだと思う。
普段から相手を大事にしている、相手の価値を認めている、信頼しているということを態度や行動で示していないと、相手も自分を信頼してくれないし、心を開いてくれない。
上司と部下の関係でも、普段の仕事やコミュニケーションで相互の信頼を築き、関係性を構築しないといけないということだと思う。
部下と約束したことは必ず実行すること。
部下の言葉にどんなに忙しくても真摯に耳を傾けること。
いつも話しやすい雰囲気、環境を作ること。「俺は忙しいんだ、話しかけるな」オーラを出さないこと。


◆そもそも部下は話さない
コミュニケーションを取ろうにも、部下が本音を話してくれない、というのはよくある話。
そもそも上司に話す、というのはとてもハードルが高いこと。
言っても聞いてもらえない、所詮何も変わらない、というあきらめや、本音をさらすリスクもあるだろう。
自分もかつての上司には同じことを感じていた。
「上司に要望を伝える、お願いする、弁明することは高さ10メートルの飛び込み台の上に立って飛び込めと言われているようなもの」
ああ、その通りだなと思った。
じゃあどうしたら話してもらえるようになるのだろう?飛び込み台からジャンプしてもらえるのだろう?

いきなり10メートルのジャンプ台からではなく、まず1メートル、3メートルといった低いジャンプ台から飛び込んでもらうこと。
練習が必要、ということだ。

これって普段から部下とコミュニケーションをし、関係性を作る、ということだと思う。
ファシリテーションのチェックインや、場作りと同じ。話しても、安全と思える環境を作ること。普段から部下のことを考え、コミュニケーションをし、信頼関係を築くこと。
この本ではそれを「居場所」「関わり」と表現している。
忘れないようにしたい。僕の一挙一動が場の雰囲気に影響すること。ぼくがコミュニケーションを疎かにしたり、ないがしろにしたりすれば関係性は簡単に壊れる。僕がネガティブな空気を出せば、それはチームに伝播する。メンバーが安心して自分の考えていることを話すことができ、お互い信頼して協力し合えるチームの風土を作れるかは、普段から僕がどれだけメンバーのことを考え、行動できるかにかかっているということ。


◆問いを共有する
「問いを共有する」ってどういうことだろう?と考えてみる。たとえば今の自分のチームだったら、どうだろう?どんな問いを共有できるだろう?

本当の意味で、お客様に選んでもらえるブローカーになるためには、何をしたらいいだろう?
お客様に感動してもらえるサービスってどんなことだろう?
自分たちの仕事のレベルをもう一段上げるために、何ができるだろう?
営業を面倒がらずに継続して、喜んでやれるようになるためには何をしたらいいんだろう?
仕事の効率性を上げ、リードタイムを短縮するために何ができるだろう?

こんな問いを、チームのみんなで共有できることだと思う。こういうことを普段から話し合い、メンバーのみんなの頭にあるような状態で仕事ができる、問いに応え、行動に移せる。前に進める。

「わかっているつもり・安定」にゆらぎを与え、「わからない・不安定」の状態にし、行動を促す「問い」の力を使う。
問いがメンバーの中で共有され、「安定」を突き崩し、メンバーが自律的に行動できる状態にを作ること。
継続的に問う「場」を作ることが必要だろうな。

この本を読んで自分のマネージャーぶりについてかなり考えさせられた。
自分がホントにまだまだ小さいな、と思うのは、まだまだ自分中心に物事を考えていること。忙しい、忙しいと言って周囲のことのに十分気を配れていない自分。目の前の仕事が忙しいことを言い訳にして組織の課題に取り組めていない、メンバーの問題に寄り添い、一緒に解決策を考え取り組むことができていないことを心の中で正当化している自分。とても恥ずかしいことだ。

チームのマネージャーとして、リーダーとしてメンバーのことを考え、メンバーの「居場所」を作ることの大切さに気づくきっかけを与えてくれたこの本に感謝したい。