コーチング入門 -わかったようでわかっていない、そもそもコーチングって何だろう?

今までコーチングの本は何冊か読んできたけれど、「コーチング」ってなんだろう?と考えた時にぜんぜん本質を捉えられていないという思いがあり、あらためて入門書を読んでみよう、と思って手に取った一冊。
この本を読んであらためて考えてみたのは、何のために自分はコーチングを知りたい、と思ったか、ということ。
きっかけは、2年前に自分が部門のリーダーになったから。
メンバーがそれぞれ、会社から言われたから、上司に言われたからでなく、自らお客さまに対して質の高いサービスを提供したい、自分の能力を伸ばしたい、と意欲を持ってイキイキと働くようなチーム、職場をつくりたかったから。
そのために、具体的に自分は何ができるんだろう?と考えた時にコーチングとの出会いがあったのだと思う。

人が能力を自分で思っていた以上の能力を発揮できる、苦労をいとわず努力できるのは、自分で納得できる、腹落ちする目標がはっきりとあって、そのために自分が何をするべきなのか明確に理解できている時だと思う。コーチングは人が、あるいは自分が目標を発見したり、努力することを後押しすることなのかな、と思っている。
そのために必要なのはチームのメンバーともっとコミュニケーションを取ること。このチームで、この仕事を通して何を実現したいのか、折に触れて話せるような環境をつくること。そして日頃からいろんなことを話せるように信頼関係を構築すること。
きっとスキルやテクニックとして捉えるだけではだめで、相手を人として尊重し、信頼することの土台の上に成立するものなのだろうと思う。

さて、この本についてだが、非常に分かりやすい説明と事例を用いて、少ないページでコーチングの基礎と全体像が分かるようにまとめてある本だと思った。
特に「信」「認」「任」という3つの漢字でコーチングの本質を集約するのはすごく分かりやすいと思った。
この他にも分かりやすいフレームワークが紹介されていて、抽象的になりがちと感じてしまうコーチングのことが分かりやすくなっている。
印象に残った点について、書いてみる。

◆傾聴の5つのポイント「かきくけこ」
「か」環境を整える
「き」キャッチャーミットを準備しよう
「く」繰り返し、あいづち、うなずきを入れて
「け」結論を急がない
「こ」心をこめて

「キャッチャーミットを準備しよう」
相手の意見や提案してきたことに対して、間違いを指摘したり、既にやったけどダメだった、といって却下してしまうのはよくやりがちなこと。自分も経験があるが、提案するまでの努力や意見を表明した勇気に対して評価がないし、今後そうした前向きな提案や意見を出そうという意欲を挫いてしまう。
投げられた球をバットで打ち返すのでなく、「キャッチャーミットで受け止める」、そのための言葉を用意することの大切さを理解すること。

「結論を急がない」
これも自分がやりがちなこと。相手が話しているのに、先回りしてこうした方がいいんじゃない、と結論を出してしまう。でもそれでは相手が考えるチャンスを奪うし、自律的に考え、行動することができなくなってしまう。話しを最後まで聴き、答えは与えるのでなく、相手から引き出すもの。


◆GROWモデル
①目標の明確化(Goals)
行動変容に結び付く、適切な目標の設定。いつも意識に上り、目標達成のための行動を促す目標でなければならない。
目標の設定って、とても難しいと思う。自分でも毎年「今年の目標」を立てるけど、恥ずかしながらほとんどは実行できない。その中で学んだことは比較的、あまり無理のない、具体的な行動としてイメージしやすいもの、習慣化に馴染みやすいものは達成しやすい。それは会社で目標設定する時も同じことだろうと思う。
達成不可能な野心的すぎる目標は挫折するだけ。もちろんストレッチした目標を立てることは重要なことだが、「こんなのムリ」と思ってしまっては自信がなくなるし、自己評価が低くなるだけなので、そのへんは相手とよくよく話し合って、納得でき、すぐに行動に移せるような目標を作る、というのが大事だと思う。

②現状の把握(Reality)
今、どこにいるのか、現在の状況はどうなのか、自分だけの一方的な認識だけを押し付けるのではなく、相手とよく話して、現状を多方面から認識すること。お互い気づいていないことがあったりして、気づいていなかった好材料やリソースが見つかることもあるし、何が障害になっているのかも認識できると思う。

③資源の発見(Resource)
これって特に今の自分には重要なことだと思う。メンバーのことをよく知らなければ利用可能なリソースがよく分からない。メンバーが何が得意なのか、何が苦手なのか、よく掌握すること。また、今のチームは少人数だけに、自分たちで全部なんとかしようと思っても限界があるので、自分たちの中からだけでなく、外から得られるリソースが何なのか、どうしたら利用できるのかをよく考えないといけないと思う。

④選択肢の創造(Options)
これも自分がよくやりがちな失敗は「決め打ち」。自分がいつもやっているやり方ではうまく行かないことがある、と認識すること。メンバーに質問したりして、どんなやり方があり得るか、幅広く選択肢を創造すること。

⑤意思の確認、計画の策定(Will)
相手のモチベーションがどのくらいなのか確かめること。「やる」といってもなかなか行動に移せないことはよくあること。できるだけ具体的な行動を起こせるように、いつやるのか、いつまでにやるのか、明確にすること。
自分でもやると決めて、やれないことはよくある。どこまでコミットするのか、自分との対話の中で自分の本気度を問うと、自分が本気になっていないことに気づくこともままにしてある。
他の人との間でもそうなのだろう。できないとしたら何が障害になっているのか明らかにすることも必要だろうし、相手を本気にさせる、モチベーションを上げる言葉を使うことも重要なことと思う。


自分がコーチングに求めていたものは何なのかを考え直し、自分のかなり曖昧だったコーチングについての理解を整理するきっかけになるいい本だった。
明日からの行動にも結び付きそうだ。

コーチング入門 (日経文庫)

コーチング入門 (日経文庫)