「ハーバード流キャリア・チェンジ術」

「ハーバード流キャリア・チェンジ術」(ハーミニア・イバーラ著)を読んだ。
そもそもこの本を読んだきっかけはグロービスで受講した「リーダーシップと人材マネジメント基礎」コースのテキストの「キャリア」の項で参考として取り上げられていたからだ。
通常キャリアチェンジと言えば、自分が何をしたいのか考える、キャリアの棚卸しをする、自分のスキル、知識の分析、理解を十分に行った上で行動を起こす、すなわち「考えてから行動する」ということが一般的な順番と考えていると思うが、この本は逆で、「行動してから考える」ことを提唱している。
計画に時間を費やすのではなく、新しいことを試し、行動したうえで新しい価値観を形成し、古い自分を書き換えて「新しい物語」を作る、というのがポイントだ。

行動する(将来の自己像を試してみる)→手がかりを得る→アイデンティティーを具体化(自己認識の変化進む)→変化の基盤を築く→自分自身になる

新しい考え、新しい人間関係、新しい環境に触れ、自分の考えが変化していくのを見ながら、自分の可能性を見極めるということだ。
確かに、自分のことを分析しようと思っても、実は自分が何をしたいのか、何に喜びを感じるのか、何が向いているのかを知ることが案外難しいものだ。
意外なところに自分の適性が隠れているかもしれないし、「やりたい」と思ったことでも試してみたら考えていたことと違う、ということはよくある。
自分が目指しているところが本当に自分に合っているのか、新しい場所で自分は生きがいや喜びを感じていけるのか、ということは実際に触れてみないと分からない。

この本が提示しているキャリアチェンジのコンセプトは行動に移しながら、新しい出会い、新しい人間関係、をつくり、徐々に自分のキャリアの「物語」を書き換えていく、というものだ。
この「物語を作る」というコンセプトに大きな共感を覚えた。
キャリアは人生そのものと言っても過言ではない。
自分の人生の大きな時間と労力を使って何かを成し遂げるものであると捉えるならば、自分の信念や価値観、人生そのもののストーリーと連続性があるものであると思う。この本で言うところの「キャリア・アイデンティティー」というものが確立されなければならない。
そして、人間は成長し、その価値観も変わっていくものであれば、キャリアも変わっていくべきものだと思う。
自分の内なる思い、アイデンティティーの変化と深化とともに自分のキャリアの「物語」は書き換えられ、自分の本質とキャリアが一致していく。

自己分析をする、キャリアの棚卸しをする・・・といった過去の自分だけを見つめたところで、型にはまったキャリア形成しかできないということがとても説得力を持つ。
この本がいま自分の心に響くのも、グロービスでいろんな出会い、いろんな価値観に触れたことで、自分の変化を感じられるようになり、人は変われることを信じられるようになったから。
もっと動いて新しい世界で自分を試し、自分の可能性、自分の本質を見つけるための指針にしたいと思う。
とてもいい本に出会ったと思う。

ハーバード流 キャリア・チェンジ術

ハーバード流 キャリア・チェンジ術