だから、僕らはこの働き方を選んだー世の中を豊かにするためにできること

何だかとても話題になっているみたいだから、気になって手に取った本。

自分たちのやりたいことを実現するために仲間とともに彼らは東京R不動産を作った。
店舗は持たない。自分たちが「これは!!」と思った物件だけを紹介する。いいところだけを強調するのではなく、不便なところやデメリットもきちんと公平に伝える。
彼らは自らのビジネスを「不動産のセレクトショップ」と呼ぶが、そんなおおよそ普通の不動産会社らしくない東京R不動産は、彼らの不動産に対するこだわりと、理想の働き方を追求した結果生まれた。

彼らが理想とする働き方として大事にしていることは次の4つのこと。

・やりたい仕事をすること
・ちゃんとお金を稼ぐこと
・社会を豊かにすること
・楽しい仲間と働くこと

たった4つ、しかもとてもシンプルなこと。
だけど、この4つをすべて実現することはとても難しい。自分の仕事を考えるとこのうち1つか2つくらいしかYesと言えない。

著者たちのスゴいところは、いくつかはできなくても仕方がない、と簡単に諦めなかったことだと思う。
自分の理想とする働き方を目指して、考え抜き、行動に移し、試行錯誤を繰り返した結果行き着いたのが今の働き方なのだろう。

彼らの選んだ道を、彼らが特別だったから、彼らが一筋縄では行かない変わり者だったから、と片付けてしまうのは簡単だ。でも、そうじゃない。
彼らの働き方には、人がどうやったらもっとHappyに働き、自分の能力を活かしきることができるのか、そして社会に価値を提供し、もっと豊かな社会を作るために貢献できるのか、そのヒントがあると思う。
彼らが大事にしている軸の一つに「楽しく」というのがある。どうせ仕事をするなら楽しい方がいい。
「楽しく」仕事をする、そのシンプルなことにはと働く個人の幸せという文脈だけでは終わらない、もっと需要な要素があると思う。
楽しくやれるからこそ、自然にもっとうまくやるにはどうしたらいいかを考えることができる。
誰から言われるのでなく、サービス向上、進化が進む。
やっている人が楽しんでいる仕事の方が、そのサービスを受ける方だって質の高いサービスを受けることができるはず。
楽しく働ける仲間が集い、一人では生まれないアイデアが生まれる。
楽し働ける仲間と切磋琢磨し、自分も成長し、仲間も成長する。もっと大きなことができるようになる。
「仕事ってこんなもの」と諦めてしまう前に、どうやったら仕事が楽しくなるだろう、と考える余地はきっとあるはずだと思う。


■モチベーションの源
「おもしろさ」と「納得感」
「おもしろさ」とは自分が好きなものを見つけ、それを好きな人に伝えて喜んでもらうこと。
「納得感」は自由とフェアネスがあること。理不尽なことがない。
これは自分が好きでやりたいことを自分の責任で自由にやる環境がある、ということだろう。
おもしろいアイデアを思いついても、リスクが高いとか、理解されないためにやらせてもらえないとしたら、誰だってモチベーションが下がるだろう。
「おもしろさ」「納得感」を軸に自由にやれることを保証されているから、彼らはモチベーションが下がることもなく常にいい仕事をしようと思うことができる。

■「個人と会社の利害が完全に一致している」
フリーエージェント制をとっている東京R不動産では、成果を出せなければ報酬がゼロになるかもしれないので、皆成果を出すために必死だ。
自分たちが何をすることで成果を出せるのか、自分たちが協同することでどう社会に対して価値を提供してくのか、いつも考えているから会社と個人が別の方向に向くことがないのだと思う。
「やるだけ損」「やっても報われない」と思う人もいない
会社にしがみつく人もいない。
自律的に考え、動くことのできる個人の集団だからこそこうした仕組みがうまく回り、機能する。


■フツウのものを楽しくする
築年次、広さ、駅からの距離・・・といった画一的なデータでしか表現できなかった不動産の業界に彼らは風穴を空けようとしている。
不動産の定性的な魅力を前面に出し、ここは魅力的!!というものを押し出し、特に不動産にこだわりのある顧客が自分のイメージやセンスにあった物件を見つけることを手助けすることに重きを置いている。
「フツウのものを楽しくする」こうした姿勢が彼らのビジネスを魅力的なものにしている。これはとても自分の働く保険業界にも適用可能なように思える。
保険を買うというのはそんな胸が躍るような楽しいものではない。
必要なものであるから仕方なく買う、というイメージ。でも保険を買うことでいろんなことを考えるきっかけになるような気がする。
自分の会社のビジネス、事業にあるリスクを見直し、どんな施策を施すべきか、保険でカバーすべきはどこか、きちんと考えることはやりようによってはクライアントにとってもいい経験になるはず。
それを面倒なもの、気が重いものではなく、ものすごく意義深いものとして感じる体験は何かあるような気がする。
自分は再保険という仕事に初めて関わったとき何だかその未知なるもの、アカデミックな響きがとてつもなく興味深く思え、世界が広がる感じがした。
見知らぬ海の向こうの保険マーケットで起きていること、トピックになっていることにすごくワクワクした覚えがある。
何かそこにヒントがあるような気がする。


■規模でなく影響力で勝負する
『僕らはなぜ影響力を持ちたいと思っているかといえば、世の中をもっと豊かにしたいという思いがあるからだ」
この言葉、とても胸に響く。
会社を大きくしたい、利益を上げる、とかいう目的はどうしても手段の目的化につながり、儲かれば何でもいいということになりかねない。
会社を大きくすることを否定するものではないが、あくまで大事なことは「世の中を豊かにすること」
自分も仕事をするうえでこの思い、忘れないようにしたい。
世の中を豊かにするために、自分は何ができるのか、考え続けたい。


■本当のマトモを追求する
「売れるもの」を提供することは企業として正しいことだろうが、それだとマスを対象とした商品ばかりになってしまい、世の中に提供される商品やサービスに多様性が無くなってしまう。特に彼らの携わる不動産は顧客の価値観やライフスタイルが密接に関与するものだから、選択の幅を広げる、多様性を世の中に提供することはとても大事なことなのだと思う。
彼らのいう「豊かさ」はとてもうなづける。
自分も「豊かさ」のために何かできるようでありたいと思う。


「楽しく働くこと」
「豊かな世の中をつくること」
こうした軸を通して自分が今の仕事をよくするために何ができるか、考え続けてみたい。
2012年のはじまりに、とても素敵な本に出会った。

だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル

だから、僕らはこの働き方を選んだ 東京R不動産のフリーエージェント・スタイル