人生に向き合う力、社会に向き合う力 - 「働きながら、社会を変える。」

酒井穣さんが自身のブログで紹介されていたので興味を持って手にした本。著者である慎泰俊さんと彼の活動のことは酒井さんの「リーダーシップでいちばん大切なこと」でも紹介されていた。

著者の意図とは違うかもしれないが、僕はこの本を「人生のリーダーシップ」の本として読んだ。この本を通して自分の生き方を振り返り、恥ずかしいことだが社会に、時には自分の人生にすら背を向けてしまっていた自分の人生に対する態度を直視し、反省せざるを得なかった。

子供の貧困についてなんとかしたいという思いからLving in Peace を立ち上げた筆者。
会社をやめて、ではなく本業を続けながらの社会貢献。この本を読んで圧倒されるのは、筆者の社会と向き合う力、そして問題意識を持ったことに対してコミットし、少しでもよくするために行動する力だ。
「人間がもたらした問題は人間の手によってなんとかできるはずだし、社会が生み出した問題は僕たち一人ひとりの行動でなくすことができるはずだ。」という言葉が彼の強い信念をよく表していると思う。

子供の貧困の問題や、児童福祉施設に暮らす子供達の貧困、虐待、子供たちのサポートの問題は豊かと思われる日本の社会の断層であり背景には複雑な問題が絡み合っている。こんな 大きな問題にぶちあたったとき、それが自分の能力を超えたものととらえ傍観者になってしまいがちだ。せいぜい批評家的に政治や行政を批判することくらいしかできなかったりする。
しかし、それでは何も変わらない。

これに対して、筆者の態度は全く違う。
自分ができること、をとことん考え抜いて、出た結論がパートタイムでの社会貢献であり、自分の強みを生かしたファイナンスを通じた支援活動だったのだ。

この本で貫かれているのはでもたった一人の小さな人間でも、社会を変えていける力になれる、という強いメッセージだ。
一人の人間の存在はちっぽけで、無力と思ってしまいがちだが、一人の人間の人生の中で、本気で自分に向き合い、社会に向き合い、行動すればこれだけのことができるんだということは正直驚きだし、一人一人の行動が本当に社会を変える力になる、ということに大きな可能性を感じる。そしてそれは決して特別な人がすることではなく、普通の人たちにもできる、普通の人たちが行動を始めることで成し遂げられるものだと分かる。

何かを成し遂げるためにはままず小さなことでも行動すること-それは些細なことかもしれないが、一歩を踏み出すことが重要だと気づかせてくれる。自分の人生に向き合い、社会に向き合い、変えていくために一歩を踏み出す勇気を与えてくれる本だ。

働きながら、社会を変える。――ビジネスパーソン「子どもの貧困」に挑む

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